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不倫の求償権

求償とは、他人の債務を弁済した者が、その他人に対して、返還の請求を求める権利のことをいいます。

保証人や連帯債務者が弁済を行った場合の他、共同不法行為や不当利得という問題で生じることがあります。

不倫という不貞行為は、1人だけで行うことは出来ません。
通常は不倫をした当事者(加害者)は2名です。
※複数の加害者がいる場合もあります。

つまり、複数の加害者による不法行為(共同不法行為)ということになります。

不法行為の加害者が複数である場合、不法行為者らは、それぞれ独立して、生じた損害全額につき連帯して責任を負います。

民法第719条1項

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。


この場合、被害者からは、不法行為の加害者全員に対してでも、その不法行為者の一部の者に対してだけでも、自由に全額を請求することが出来ます。

民法第432条

数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。


共同不法行為者同士の間においては、それぞれの者に、責任に応じた負担割合がありますので、自己の責任割合を超えて被害者に賠償を行った者は、その超過部分について、他の共同不法行為者に弁済を求めることが出来ます。
この「自己の負担割合を超過して賠償を行った分の弁済の負担を、他の共同不法行為者に求める権利」のことを、求償権といいます。


最高裁 昭和41年11月18日 判決

要旨
「共同不法行為者の一人が被害者に賠償した場合には、他の共同不法行為者の負担すべき過失割合(責任割合)に応じて求償できる。」


求償権の負担割合

負担割合

民法上、夫婦間には守操義務(他の異性との肉体関係をもってはいけないという義務)があります。
そのため、一般的な裁判例によると、原則として、不倫の主たる責任は、貞操義務に違反して不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方(第三者)の責任は副次的なものと解されています。


東京地方裁判所平成16年3月26日判決要旨

要旨
「婚姻関係の平穏は第一次的には配偶者相互間の守操義務、協力義務によって維持されるべきものであり、この義務は、配偶者以外の第三者の負う婚姻秩序尊重義務とでもいうべき一般的義務とは異なるというべきであって、夫婦間の不貞行為又は婚姻破綻についての主たる責任は原則として不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方(第三者)の責任は副次的なものと解すべきであるから、慰謝料の算定に当たっても、この点を考慮することが相当である。
本件不貞行為は、専ら被告A(不貞配偶者)が主導的に開始し、これを維持したものであり、
(中略)
本件各証拠並びに弁論の全趣旨を総合して本件不貞行為における過失割合を認定するならば、被告A(不貞配偶者)は9割、被告B(不倫相手の第三者)が1割であるとすることが相当である。」


東京地方裁判所平成16年9月3日判決要旨

要旨
「不貞行為による平穏な家庭生活の侵害は、不貞に及んだ配偶者が第一次的に責任を負うべきであり、損害への寄与は原則として不倫の相手方を上回るというべきである。
(中略)
このような経緯等をふまえると、原告(求償請求した第三者男性)が3割、被告(不貞した配偶者女性)7割と考えるのが相当である。」


上記のとおり、裁判の場合には、おおむね不倫相手の負うべき責任は、全体の損害のうちの3割から1割の範囲に留まると解釈される場合が多いようです。
もっとも、事案により、どちらが積極的に誘惑をして不貞に至ったか、もしくは、関係継続のための交際解消の引き留め行為をしたか、さらには、不倫当事者双方の年齢や社会的地位、当事者間の立場関係、その他、様々な事情が考慮されますので、事案により判断が異なりますので、注意が必要です。


求償権の発生時期と求償権の放棄

なお、「求償権」というのは、実際に賠償を行った場合に発生する、共同不法行為者間での問題であります。
よって、原則としては、弁済前には権利が生じませんし、被害者に主張すべき問題では無いということになります。

裁判外の示談であれば、求償権を放棄させ、不倫相手が、自分の配偶者に金銭を請求しないように求めることは可能です。
そして、相手が承諾するのであれば、そのような取り決めの合意を行うことは、問題がありません。

ただし、不倫された配偶者と不倫相手の間で「求償権放棄」の定めをして示談をした場合でも、不倫をした配偶者が、自主的に、内密で不倫相手にお金を支払うことについては、完全に制限することは極めて困難な場合が多くあるかと思います。

とはいえ、求償権の放棄を定めなかったとして、加害者の一人が仮に示談で150万を支払ったとして、もう一方の不倫当事者に半額の75万円を求償請求した場合に、「慰謝料総額300万円のうち、その一部として貴殿は、自分の負担割合部分である150万円を支払ったに過ぎないから求償権は生じません」等と反論される余地もあります。

そうなると、最終的には、全体の慰謝料金額と、各不倫当事者の負担割合などについて、裁判で争う他無くなってしまい、現実的には、相当に手間と費用のかかる面倒な問題になる可能性があります。

そのため、裁判外の示談においては、出来る限りは、事後的なトラブルや請求が生じないよう、事前に求償権放棄の条項を明記して、すべてを完全に解決させることが一番安全です。



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